この花はきらい

秋海棠が咲いていたころ、園芸好きの老女が庭仕事をしていた。用があって呼びにいった20代のわたしが 「三色菫は植えないのですか」 と何気に尋ねた。 「三色菫は嫌いです」 きっぱりと言われた。 今ならビオラと呼ばれ、ここかしこに咲いている花だ。 び…

やまんば怒る

山の中、風の音、小鳥のさえずり、夜、獣の動き回る音、そんな住まいに居る訳ではない。都下だから高いビルに囲まれてはいないけれど、心の狭いやまんばの怒りを誘うものがある。 まず政治家のポスター、妙な薄笑い、お前たちの顔はどうでもいいのに、やたら…

やまんばのうた

コロナ下、うたを聞く機会が増えた。ペドロアンドカプリシャスの『別れの朝』若いときには化粧の濃い女性歌手がセンターで歌っている、という感じだったのだが、調べると彼女前野曜子の写真があって、宝塚時代の清楚な映像もあった。若くして、病いで亡くな…

やまんばは行く

やまんばは行く 還暦を迎えた京子は白髪が増えて来たことを気にしていた。そろそろ染めなくてはと思いながら街を行く女性を眺めた。染めてる、染めてる、杖をついてやっと歩いているようなおばあちゃんも、パーマをかけて染めている。黒、茶色、金、時に緑、…