やまんば怒る

 山の中、風の音、小鳥のさえずり、夜、獣の動き回る音、そんな住まいに居る訳ではない。都下だから高いビルに囲まれてはいないけれど、心の狭いやまんばの怒りを誘うものがある。

 まず政治家のポスター、妙な薄笑い、お前たちの顔はどうでもいいのに、やたらベタベタ、選挙制度のなすわざか、顔で一票はいれない。

 次にたまに都心に出ると、モニターに音楽、やたらうるさい。がんがんと耳を襲う。電車を降りたとたんにある。避けることはできず、慣れることはできない。だから新宿は嫌い。

そして、コロナ下、電車内はみなマスクをしている。でもおばちゃんたちのおしゃべりは、止まらない。前に立ったふたり、そのうちの一人、嫁さんが不妊治療をしないことを延々とこぼす。そんな話は聞きたくない。周りに人がいることを一切気にしていない。

やまんばは心の中で怒りを爆発させる。